[メイン2] マリア :  

[メイン2] マリア :  

[メイン2] マリア : まるで悪夢の始まりのように重々しく、知らぬ地に立ち

[メイン2] マリア : 夢の中目を覚ませば、目の前には

[メイン2] ツリーガード : 私に跪く、金色の騎兵が一人

[メイン2] マリア : よもやコレが私の得た物か、苦笑すらなく視線だけ向けて

[メイン2] マリア : 仕方もない、悪夢の中でも狩人ならば

[メイン2] マリア : やる事は一つ

[メイン2] マリア : 今宵は"狩り"に興じよう、そう決めた

[メイン2] マリア : そして、騎兵と共にゆらりと歩き出す

[メイン2]   : ────狩るか狩られるか。

[メイン2]   : それを認めるかのように、月の光がゆらりとマリアへと差して。

[メイン2] マリア : 「…おや」

[メイン2]   : その光の前に、一つの影。

[メイン2] カンナ・カムイ : 「……あ」

[メイン2] マリア : 「竜の獣の娘、か」

[メイン2] カンナ・カムイ : さっき、”殺意”を向けてきた、女の人……。
”竜狩り”……。

[メイン2] マリア : 「惑ったか、或いは」

[メイン2] マリア : 「血に飢えたか」

[メイン2] マリア : ガキィン

[メイン2] カンナ・カムイ : 「……わたしは」

[メイン2] マリア : 刀を二つ、長刀と短刀に分けつつ

[メイン2] マリア : 彼女の言葉を待つ

[メイン2] カンナ・カムイ : ばちり、ばちりと、カンナの周囲からはじくような音が聞こえる。

[メイン2] カンナ・カムイ : そしてそれは目に映る────

[メイン2] マリア : 「これは…」

[メイン2] カンナ・カムイ : 「狩られるわけには、いかないッ…!」

[メイン2] カンナ・カムイ : そうして、睨みつけた後。

[メイン2] マリア : 「雷とは、そうかそうか」

[メイン2] カンナ・カムイ : ────放電が、マリアへと襲い掛かろうとする。

[メイン2] マリア : 「神をも屠りえる、悍ましい力よ」
首を捻ると

[メイン2] カンナ・カムイ : 「……あなたは、随分落ち着いてるんだね……っ」

[メイン2] ツリーガード : その稲妻を、金色の大楯が弾く

[メイン2] マリア : 「しかして今宵は竜狩りの騎士と行こう、我らが騎兵と一人の狩人による」

[メイン2] カンナ・カムイ : 草むらを燃やしながらも進む、その電撃は…金色の盾へと、届くが。
はじかれて。

[メイン2] カンナ・カムイ : 「……狩人…?…騎士……?」

[メイン2] マリア : 「なあに、ただの戯言さ」

[メイン2] マリア : 地を蹴ると

[メイン2] マリア : マリアの姿が煙のように揺らぎ、弾けて飛び出す

[メイン2] カンナ・カムイ : ……その目に宿る、恐怖の瞳。
だからこそ、”拒否”してしまいそうな……

[メイン2] マリア : 二刀構えて娘の眼前

[メイン2] カンナ・カムイ : 「私の……”夢”を、邪魔しないでッ────!!!」

[メイン2] マリア : 舞うようにその刃を振るおうとする

[メイン2] カンナ・カムイ : その刀を…握る。

[メイン2] マリア : 「おや」

[メイン2] カンナ・カムイ : もっともカンナの手は少女のものではなく。
異形の、竜の爪。

[メイン2] マリア : 「並の獣では無い、この膂力」

[メイン2] マリア : グッと地に足つけるが引き抜けず

[メイン2] カンナ・カムイ : 「竜だから、これ…くらいッ……!!」

[メイン2] マリア : 「竜という恐ろしき獣とは…ここまでか」

[メイン2] カンナ・カムイ : そして、ばちりばちりと音が鳴った後。
武器へと、放電。

[メイン2] マリア : 三角帽から瞳を覗かせて

[メイン2] マリア : パッと、掴まれた刀から手を離し

[メイン2] カンナ・カムイ : 「……ッ」
その、冷酷な瞳を、睨みつける。

[メイン2] カンナ・カムイ : 「……なんで、そんなに…冷静なの…?ここは、”現実”だよ…?」

[メイン2] マリア : 腰から一丁の銃を取り出しつつ

[メイン2] マリア : 「狩人とは夢を見て、そして狩り続ける」

[メイン2] カンナ・カムイ : 刀を、その場へと放り捨てる。

[メイン2] マリア : 「夜が明けるまで死は許されない、そして私は夜明けを見れない」

[メイン2] マリア : 「それは恐れ故、役目故よ」

[メイン2] マリア : 「狩人とは、得てして夢に囚われるのだからね」

[メイン2] マリア : 引き金を引いて、カンナの額に向けて水銀弾を撃ち放つ

[メイン2] カンナ・カムイ : 「……!」

[メイン2] カンナ・カムイ : その弾丸を、竜の動体視力でとらえるも────。
間一髪にしかならず、頬を擦る。

[メイン2] マリア : その間もう一度幻影のようにステップを踏み、投げ捨てられた刀を拾う

[メイン2] マリア : 「速いな、反応もいい」

[メイン2] カンナ・カムイ : 「……それが…あなたが、こうやって…誰かを”狩ろうとする”意味…?」

[メイン2] マリア : 「意味、か」

[メイン2] マリア : 「そうさな…」

[メイン2] マリア : 「初めは意味であった筈さ」

[メイン2] マリア : 「今や、呪いに侵された宿命か烙印だよ」

[メイン2] カンナ・カムイ : ……っ、竜の皮膚なのに、なんであの弾丸は…削ることも出来るの…?
……間違いなく、この人……”殺す事”に、慣れている…。

[メイン2] マリア : 「狩人というのはね」

[メイン2] カンナ・カムイ : 「……」

[メイン2] マリア : 「獣を狩る果てに、獣に堕ちていくのだから」

[メイン2] マリア : 「尤も私は…」

[メイン2] マリア : 「獣すら恐れるような何かに、縛られたようだがね」

[メイン2] マリア : ステップ踏んで煙を上げる

[メイン2] マリア : 縦横無尽に素早く飛び出して、機を測る

[メイン2] カンナ・カムイ : 「……希望の一つも…ないなんて…!あなたは”獣”でもないんだから…ッ」

[メイン2] カンナ・カムイ : その動きに翻弄されるように、周囲を見回すが。

[メイン2] マリア : 「希望か、そうか」

[メイン2] カンナ・カムイ : 「…”獣”の、私だって夢はあるんだよ…ッ!」

[メイン2] マリア : 「貴殿は随分と夢を見る」

[メイン2] マリア : 「病を知らぬ、無垢だ」

[メイン2] マリア : 「なのに」

[メイン2] マリア : 「獣なのか」
不思議そうに、少しか細く呟き

[メイン2] カンナ・カムイ : 今度は、両の掌に球体の電気を集めさせて。

[メイン2] マリア : 木を蹴って、カンナに向けて飛び出す

[メイン2] カンナ・カムイ : 「”獣”でも、何かを望んだっていいはず……!!!!」

[メイン2] カンナ・カムイ : だって────

[メイン2] カンナ・カムイ : 「私が、”現実”にいるって、認めてもらいたいんだから────」

[メイン2] カンナ・カムイ : そうして、飛び込む彼女に。

[メイン2] マリア : 「…"現実"か」

[メイン2] カンナ・カムイ : 光線のように凝縮された、電撃の柱を打ち込む。

[メイン2] カンナ・カムイ : ────そう、認めてもらいたい。
自らの大切な人に、私は頑張っているのだと、認めてもらう。
そうしたら私は、初めてあの人にとって”夢”じゃなくなる。

[メイン2] マリア : 「恐ろしいよ、ああ恐ろしい」

[メイン2] マリア : 「夢の中で無いのにこれでは、そうさ」

[メイン2] マリア : 「呪いは現実になるだろうに」
暗く呟き

[メイン2] カンナ・カムイ : 周囲にある草木は熱量のあまり、焼け焦げ。
そんな高熱なものが”人”へと向かっていく────。

[メイン2] マリア : 刀を両方、地面に突き立て

[メイン2] マリア : それを足場に上空に飛び出す

[メイン2] カンナ・カムイ : 「……!?」
こんな時でも……冷静のまま……

[メイン2] カンナ・カムイ : 「………なっ」

[メイン2] マリア : そして月を背にマリアと

[メイン2] カンナ・カムイ : 一直線に放たれたソレは、後ろの木々を貫通することしかできず。

[メイン2] ツリーガード : 飛び上がった騎兵が交差し

[メイン2] マリア : 狩人は、黄金のハルバードを借りて

[メイン2] カンナ・カムイ : 「まさか……”人”、が……」

[メイン2] マリア : 「ならば覚めさせてくれよ」

[メイン2] カンナ・カムイ : ────いや、違った。

[メイン2] マリア : 「こんな"獣狩りの夜"をな」

[メイン2] カンナ・カムイ : 月の後光を背中にして、”狩ろう”とする彼女の形は。

[メイン2] カンナ・カムイ : ────正しく、”獣”。

[メイン2] カンナ・カムイ : 「ッ、くッ……!!!」

[メイン2] マリア : ツリーガードの大楯を蹴り

[メイン2] カンナ・カムイ : 腕を交差させ、竜麟へと変貌していく。

[メイン2] マリア : カンナに向けて、人の丈の倍ある刃を振り下ろす

[メイン2] カンナ・カムイ : しかして、腕にマリアの”牙”が突き刺さる。

[メイン2] マリア : 地面を揺るがす黄金の一撃

[メイン2] カンナ・カムイ : 「…あ、ッ……くううう…!!」
その腕からは”血”も覗き、カンナの見ているこれが”夢”ではないことを再確認させる。

[メイン2] マリア : 重々しい刃の先、呻く姿に

[メイン2] カンナ・カムイ : 「…ッ、いやだ……!!」

[メイン2] マリア : 「…獣か、本当に」

[メイン2] カンナ・カムイ : 「…私は、獣で……竜だ…」

[メイン2] マリア : 「…そうか」

[メイン2] カンナ・カムイ : 「そこは、絶対に揺るがない……ゆるがせない…」

[メイン2] マリア : 「だろうな、何せ」

[メイン2] マリア : 「…貴殿は"恐ろしく無い"」

[メイン2] マリア : 突き立てたハルバードの上から、カムイを覗く

[メイン2] カンナ・カムイ : 「……恐ろしく、ない…?」

[メイン2] マリア : 「業を重ねる程」

[メイン2] マリア : 「聖なる程」

[メイン2] マリア : 「血に酔う程に」

[メイン2] マリア : 「人は恐ろしい獣と化す」

[メイン2] カンナ・カムイ : 血が流れるほどの痛みは、顔に表れて。
眉が顰めて、歯を食いしばる。

[メイン2] マリア : 「しかし、竜でありながら可憐な貴殿よ」

[メイン2] マリア : 「不思議よな、夢に囚われて無いと見える」

[メイン2] マリア : 「まるで御伽噺だよ」
苦笑しつつ

[メイン2] カンナ・カムイ : 「……夢は囚われるものじゃない、と思ってるから」

[メイン2] カンナ・カムイ : 「掴んで、その証を…褒められる事こそが、夢なんだ」

[メイン2] マリア : 「…」

[メイン2] カンナ・カムイ : 「だって、そうじゃないと────」

[メイン2] マリア : 「夢を、持つか」

[メイン2] カンナ・カムイ : 「────夢は、”悪夢”になっちゃう」

[メイン2] カンナ・カムイ : こくり、弱弱しい顔で頷く。

[メイン2] マリア : 「………そうか、よもやよね」

[メイン2] マリア : 「獣となって、夢に囚われないとは」

[メイン2] マリア : 「師はさぞ、驚くでしょう」

[メイン2] マリア : ハルバードを蹴り上げて、食い込んだ刃を引く

[メイン2] マリア : 「しかしね」

[メイン2] マリア : 「既に囚われてしまえば、もう出口は無いんだよ」

[メイン2] マリア : 顔を伏せて

[メイン2] マリア : 「夢を取りこぼせば、恐ろしいものが蔓延る」

[メイン2] カンナ・カムイ : 「……あ、く、ぅ……あれ…?」
引き抜いた時の痛みに堪え……
…あれ、もっと…攻撃しない……の…?

[メイン2] マリア : 「月は赫く、獣は唸る」

[メイン2] マリア : 「狩人達は、夢の果て…」

[メイン2] マリア : 「私は夢を持てなかった」

[メイン2] マリア : 「何故なら、人とは弱いからさ」

[メイン2] マリア : 「人は獣に堕ちてしまうのだよ、産まれながらの貴殿よ」

[メイン2] マリア : 「そしてそれが堪らなく恐ろしい」

[メイン2] マリア : 「弱い者だけの、恐れと終わりは」

[メイン2] マリア : 「逃れ得ない"悪夢"さ」

[メイン2] マリア : 目の前の"上位者"に、乾き笑う

[メイン2] カンナ・カムイ : 弱い者だったからこそ、獣へと堕ちた……。

[メイン2] カンナ・カムイ : 「……お姉さんは、じゃあ…今も、囚われてる…の…?」

[メイン2] カンナ・カムイ : 「…どうにかしたいって、思わないの…?」

[メイン2] マリア : 「思うて、何かできたと考えるかい」

[メイン2] マリア : 「人は人よ」

[メイン2] マリア : 「この血が例え果てなく貴くても尚人だ」

[メイン2] マリア : 「寧ろ──」

[メイン2] カンナ・カムイ : ごくり、その連続して放つ言葉の数々に。
”人”だからこそ経験した、”重み”を感じて。

[メイン2] カンナ・カムイ : 「……」

[メイン2] マリア : 「強き人は、弱き人と共に崩れ行く脆い砦よ」

[メイン2] マリア : 「守りたい、願いたい、叶うと幻するが故」

[メイン2] マリア : 「ああ、その先は悪夢の底さ」

[メイン2] マリア : 「胡乱なる、苦痛の坩堝…」

[メイン2] マリア : 「叶わぬ痛みと、手に取れると幻した思い上がりだけがかき混ぜられた…」

[メイン2] マリア : 「…貴殿は、強いのさ」

[メイン2] マリア : 「叶えられるよ、夢も持てるだろう」

[メイン2] マリア : 「竜とは、そうし得る幻想なのだから」

[メイン2] ツリーガード : 騎兵が、彼女の背後に立つ

[メイン2] カンナ・カムイ : 「……む、ぅ…」
その言葉に、顔が歪み。

[メイン2] マリア : 「見たまえ」

[メイン2] マリア : 「鎧も、強さも」

[メイン2] マリア : ハルバードを騎兵に渡して

[メイン2] カンナ・カムイ : 「……え?」
ちらり、とそちらの方を向く。

[メイン2] マリア : 「振るう武器ですらも」

[メイン2] マリア : 「それは弱さなんだよ」

[メイン2] マリア : 「人はそうする事でしか」

[メイン2] マリア : 「生きられない程に、持たざる生命だったのだから」

[メイン2] マリア : 突き立てた両刀を拾い、騎兵の馬に飛び乗る

[メイン2] カンナ・カムイ : その飛び乗った背中に。

[メイン2] カンナ・カムイ : ……彼女の言う通り、私が見てきた”人々”は…竜との闘いも出来ないような、”弱い”人。
だからこそ、その言葉は……わかる、わかってしまうが。

[メイン2] カンナ・カムイ : 「……だからって、私も……全部が持てるわけじゃ、ないんだ」

[メイン2] カンナ・カムイ : そう呟いて。
血の赤が、肌の白を塗り替えていった。

[メイン2] マリア : 「…知っているさ」

[メイン2] マリア : 「完璧な存在など知らぬ」

[メイン2] マリア : 「ただ貴殿は…」

[メイン2] マリア : 「それらより"恐ろしくなかった"だけだ」

[メイン2] ツリーガード : そう言い切ると同時に

[メイン2] ツリーガード : 嗎と共に、駆け出そうとする

[メイン2] カンナ・カムイ : 「あっ……!」

[メイン2] カンナ・カムイ : 「ま、待って……その…!」

[メイン2] カンナ・カムイ : 「……殺さない、の……?」

[メイン2] マリア : 「…殺されたいのか?」

[メイン2] カンナ・カムイ : ……折角見逃してくれたのに、待って…なんて、ヘンな話かも、しれない…けど。

[メイン2] マリア : 「まあ」

[メイン2] カンナ・カムイ : 首を横に、ぶんぶん振る。

[メイン2] マリア : 「納得しないのなら聞いておけ」

[メイン2] マリア : 「…今の貴殿は殺せない」

[メイン2] カンナ・カムイ : 「……だって、あのまま切れた…のに…」

[メイン2] カンナ・カムイ : 「……」

[メイン2] マリア : 「血に酔わず」

[メイン2] マリア : 「狂わず」

[メイン2] カンナ・カムイ : 腕の傷を一度見て、マリアへともう一度目をやる。

[メイン2] マリア : 「見据える者など」

[メイン2] マリア : 「切り捨てた所で、死にはしない」

[メイン2] マリア : 「言うなれば…」

[メイン2] マリア : 「信仰のようなものさ」

[メイン2] マリア : 振り向かず、そう言い切り

[メイン2] カンナ・カムイ : 「……難しくって、よくわからない」

[メイン2] カンナ・カムイ : 「…けど、ありがとう」

[メイン2] カンナ・カムイ : ぺこ、頭を下げながら。

[メイン2] マリア : 振り向かず、騎兵と共に夜闇に消える

[メイン2] カンナ・カムイ : そうして、月の光はその場に差したまま。

[メイン2] カンナ・カムイ : その淡いものが、血の赤をゆっくりと照らしていた。

[メイン2] カンナ・カムイ : ……強いって言われても、よくわからない。
私はきっと、未熟なままだから。闘争心があるその心は消えないんだろう。

[メイン2] カンナ・カムイ : ただ、一つ……。
彼女と話して、思ったことは、ある。

[メイン2] カンナ・カムイ : ……”竜”ってだけなら、私は……違うから。
このまま、傷つけあうのは……いやだ。

[メイン2] カンナ・カムイ : あの人だって……見逃してくれたんだから。

[メイン2] カンナ・カムイ : 弱い、っていうあの人が出来たなら。

[メイン2] カンナ・カムイ : 私にだって、出来るはずだ。
もっと別の方法で、認めてもらう事だって…出来るはずだから。

[メイン2] カンナ・カムイ : だから、私は───

[メイン2] カンナ・カムイ :
 ブラッドボーン
『血染めの夜』にしたくない。

[メイン2] カンナ・カムイ :  

[メイン2] カンナ・カムイ :  

[メイン2] カンナ・カムイ :  

[メイン2] ルシード・グランセニック :  

[メイン2] ルシード・グランセニック : 森から転げる様に抜け出ると、そこには人が住んでいたであろう住宅街が広がっていた

[メイン2] ルシード・グランセニック : 「犬飼の奴は……い、いないな」

[メイン2] ルシード・グランセニック : 青あざと泥にまみれた体を庇いながら、歩を進める

[メイン2] ルシード・グランセニック : 日常の残骸が数多く残る街に、カケラの安らぎを求め放浪する

[メイン2] ルシード・グランセニック : ……いつも、こうだ

[メイン2] ルシード・グランセニック : 恐ろしい、そんな衝動に突き動かされて、ずっと生きていた

[メイン2] ルシード・グランセニック : 貧しい時も、富める時も
かつて、自分を殺めた何かに怯えて──

[メイン2] ルシード・グランセニック : 本当なら、このまま地面にでも丸まって全部終わるのを待っていたい

[メイン2] ルシード・グランセニック : 殺し合いが好きなんて人種は、それ同士で勝手にしていろと、死ぬのが好きなら好きにしろ……と唾棄する思いを隠しもせずに、ルシードは思う

[メイン2] ルシード・グランセニック : ──けれど

[メイン2] ルシード・グランセニック : あの二人は、違うとわかっている

[メイン2] ルシード・グランセニック : 名前も知らない無垢な少女、そして、日常の名残が強く見えるケーイチ

[メイン2] ルシード・グランセニック : 朗らかに、生きるのが似合う……
英雄とか、魔星だとか、そんな運命に巻き込まれるべきではない そう思える人のためなら

[メイン2] ルシード・グランセニック : 僕は、まだ歩ける

[メイン2] ルシード・グランセニック : 敵は恐ろしいけれど、震えてしまうけれど
二人を助ける為なら、僕は──

[メイン2] ルシード・グランセニック : 戦える

[メイン2] ルシード・グランセニック : 「その、ためにも一休みできる場所を、探さないとね」

[メイン2] ルシード・グランセニック : 隠れる為でなく、次へと歩む為
似合わない真似をしていると自覚しながら、ルシードは寂れたレストランを見つける

[メイン2] ルシード・グランセニック : 「……食事は出ないだろうが、無いよりはマシか」

[メイン2] ルシード・グランセニック : ドアを開き、そのまま入店する

[メイン2] カンナ・カムイ : 「もぐもぐ」

[メイン2] カンナ・カムイ : ルシードが入店し、目の飛び込んできたのは。

[メイン2] ルシード・グランセニック : ──まさしく、楽園だった

[メイン2] カンナ・カムイ : 彼が想像していた白髪の少女。
最も、その姿には似合わない程ご飯を食べているが。

[メイン2] ルシード・グランセニック : 見るがいい、豊かに実りし畑の産んだ数多の恵みを微笑ましくも頬張るこの愛らしさ

[メイン2] ルシード・グランセニック : いっそ神々しいとすら呼べる、いいや呼べ、呼ばなかろうが僕は呼ぶ

[メイン2] カンナ・カムイ : ……うん、傷は……回復してるみたいだ。
でも……思いのほか、深い……やっぱり、怪我は痛いな……

[メイン2] ルシード・グランセニック : 「そう、ここが僕のたどり着くべき場所……約束されしユートピア……」

[メイン2] カンナ・カムイ : 「んぐっ」

[メイン2] カンナ・カムイ : その声に、入ってきた方を見て。

[メイン2] ルシード・グランセニック : 「ってばか!まだ死ぬには早い!二人を見つけてないんだ……幻なんて見てる場合か!」

[メイン2] カンナ・カムイ : 「え、あー……ヘンな人!」

[メイン2] ルシード・グランセニック : 「……あれ?」

[メイン2] カンナ・カムイ : ぴしり、箸の先でルシードを指す。

[メイン2] ルシード・グランセニック : 「あの、もしかして現実かい?」

[メイン2] カンナ・カムイ : 「え、うん」

[メイン2] カンナ・カムイ : 箸をおき、手をほっぺへと引っ張る。

[メイン2] カンナ・カムイ : 「げんひつだよ、げんひつ~」

[メイン2] ルシード・グランセニック : 「い、いたい!幸せにいひゃい!なら、君は最初にあった女の子か!」

[メイン2] カンナ・カムイ : 「うん、名前はカンナカムイ」
パッと手を離して、そう名乗る。

[メイン2] カンナ・カムイ : 「あなたこそ、どうしてここに来たの?ボロボロみたいだけど」

[メイン2] ルシード・グランセニック : 「僕はルシード……って!君も少し怪我して無いかい!?」

[メイン2] カンナ・カムイ : ちらりと、その服装を一瞥する。
まるで地の後を駆けたような判別具合で。
……痛そう。

[メイン2] ルシード・グランセニック : 慌てて、ポケットからハンカチを取り出す

[メイン2] カンナ・カムイ : 「あ、っ…うん、ちょっとね」

[メイン2] カンナ・カムイ : ほっぺの赤色は消えずに、そのままだった。

[メイン2] カンナ・カムイ : 「戦ってきたから」

[メイン2] ルシード・グランセニック : 「……そうか、戦いは、君が望んで?」

[メイン2] カンナ・カムイ : そう、無表情。
無垢の顔で、そう言った。

[メイン2] ルシード・グランセニック : 不安そうに尋ねる

[メイン2] カンナ・カムイ : 「…殺されたくないから、闘ったの、私は」

[メイン2] カンナ・カムイ : 「何もしてないと、狩られてしまうだろうから」

[メイン2] カンナ・カムイ : ぎゅっと、手を握ったまま。

[メイン2] ルシード・グランセニック : 「……そうか、すまない。僕が遅れてしまったばかりに」

[メイン2] カンナ・カムイ : 「…ルシード、あなたは……戦うのが嫌なの?」

[メイン2] カンナ・カムイ : その謝罪に、ふるふると首を振っておく。
……竜なら、敵対されても仕方ないのはあるから。

[メイン2] ルシード・グランセニック : カンナの頬へ、冷やしたハンカチを当てながら、傅いた

[メイン2] カンナ・カムイ : 「んむぅ……」
ちべたい……

[メイン2] ルシード・グランセニック : 「ああ、僕は戦いなんて嫌いだカンナも、バトルマニアってわけじゃないだろう?」

[メイン2] カンナ・カムイ : 「大好きって程ではない……でも、嫌いでもない」

[メイン2] カンナ・カムイ : 「だって私は、竜。私には、闘う”血”は流れてるから」

[メイン2] ルシード・グランセニック : 「……竜?」

[メイン2] カンナ・カムイ : そう、変わらずぽかんとした目で見つめつつ。

[メイン2] ルシード・グランセニック : 「君は……ドラゴンって奴なのかい?」

[メイン2] カンナ・カムイ : 「そうだよ?」

[メイン2] ルシード・グランセニック : ならばこの天上の美も納得が──いや、今は真面目に話さなければ、いいや僕は真面目に彼女を称えて… といった具合にファンシーな言葉に混乱する

[メイン2] カンナ・カムイ : そう言いながら、腕がぼこぼこと膨れ上がっていき。
あっという間に”白い異形”の腕へと、変化する。

[メイン2] ルシード・グランセニック : 「……」

[メイン2] カンナ・カムイ : ────これが、竜。

[メイン2] ルシード・グランセニック : 唖然とする

[メイン2] ルシード・グランセニック : 人体から、溢れるように現れた白銀の鱗

[メイン2] ルシード・グランセニック : 鋭き爪は万物を貫くことを確信させる鋭さがある

[メイン2] ルシード・グランセニック : その様はまさしく異形

[メイン2] カンナ・カムイ : 「んむう…」
困ったように眉が下がり、ルシードへと目をやる。

[メイン2] カンナ・カムイ : 「……竜は、嫌?」

[メイン2] ルシード・グランセニック : それに、抱くに相応しい感情は、恐怖だったのだろうが──

[メイン2] ルシード・グランセニック : 「なんて、綺麗なんだ」

[メイン2] ルシード・グランセニック : まるで、星を初めて見た子供のように
思わずと、言葉が溢れる

[メイン2] カンナ・カムイ : 白髪の彼女は、竜というだけで切りかかっていた。
それ以外の人だって、恐れたり称えたり様々で、目線は同じにはならなかったことを、竜であるカムイは知っている、のだが。

[メイン2] カンナ・カムイ : 「……ほえ」

[メイン2] カンナ・カムイ : 「むぇ、綺麗…?」

[メイン2] ルシード・グランセニック : 「ああ、こんなに美しい物は、見たことがない」

[メイン2] カンナ・カムイ : 称えるに近いようで、ズレたような言葉に。
きょとんと首をかしげる。

[メイン2] カンナ・カムイ : 「……む、ぅうう……!!どうして…?」

[メイン2] カンナ・カムイ : 「この腕だって、誰かを傷つけたりできるんだよ?」

[メイン2] カンナ・カムイ : そう言い。

[メイン2] カンナ・カムイ : ガァン、と…床に傷を付ける。

[メイン2] カンナ・カムイ : 人では成しえないような、そんな跡。

[メイン2] ルシード・グランセニック : その様を見て、顔色ひとつ変えないで
根底にある、恐怖さえ今は置き去りにして

[メイン2] ルシード・グランセニック : 「いいかい、カンナ。誰かを傷つけるなんて……残酷な、言い方だけれど」

[メイン2] ルシード・グランセニック : 「誰だって、なんだって、同じなんだ」

[メイン2] カンナ・カムイ : 「……誰だって、同じ?」

[メイン2] カンナ・カムイ : 「じゃあ、ルシードも?」

[メイン2] ルシード・グランセニック : 「ああ、僕も、なんなら、お茶碗や、お箸も」

[メイン2] ルシード・グランセニック : 「物は存在するだけで、何かを傷つけてしまう。どんな風に、かは言い切れない程だ」

[メイン2] ルシード・グランセニック : 「人間も、或いは人外って類でも、それこそただの物でも……」

[メイン2] カンナ・カムイ : 「……」
ちら、と自らが持っていたそれらを見つめて。

[メイン2] ルシード・グランセニック : 「案外、みんな傷つきやすいんだよ」

[メイン2] カンナ・カムイ : 「……みんな、傷つきやすい……」

[メイン2] カンナ・カムイ : ……だから、あの人は……私を、殺さないでくれたのかな…

[メイン2] ルシード・グランセニック : 毛布のような軽やかな声で、ルシードは幼き竜に自分の見つけた答えを教える

[メイン2] カンナ・カムイ : その声に揺られるように、一歩近づいて。

[メイン2] カンナ・カムイ : 「だから、ルシードは……”逆襲”なんて、したくないの?」
逆襲、ルシードを傷つけた誰かへとの、闘い。

[メイン2] カンナ・カムイ : いや、それだけじゃない…
”弱い人間”というなら、弱くしてしまっている全てのものへの、”逆襲”。

[メイン2] カンナ・カムイ : それを全て、いやだって言うの?

[メイン2] カンナ・カムイ : ちらり、そのルシードの紫の瞳をのぞき込む。

[メイン2] ルシード・グランセニック : 「……そうだね」

[メイン2] ルシード・グランセニック : 「僕は、そこまで怨み深いわけでもないし、大勢の人を敵に回してまで、傷つけられた怨みを晴らす気はない」

[メイン2] ルシード・グランセニック : 「……けれど」

[メイン2] ルシード・グランセニック : 「僕は、守る為なら。大切な人を、奪わせない……“守る”為なら」

[メイン2] ルシード・グランセニック : 「どんな物にさえ、どこの誰であれ……」

[メイン2] ルシード・グランセニック : 「守る為に、殺してみせる」

[メイン2] ルシード・グランセニック : それが、ルシードの掲げる逆襲なのだろう

[メイン2] ルシード・グランセニック : 守る為なら、奪われないためなら──
如何なる者が相手とて、立ち向かおう

[メイン2] カンナ・カムイ : 「……!」
その紫の瞳が、一瞬────決意の色に、染まったことに。
”竜”であったとしても、びくんと体が震えて。

[メイン2] カンナ・カムイ : 「……すごいね、ルシードって」

[メイン2] カンナ・カムイ : その奥に宿る、”逆襲”の星が…輝いていたことに、唾を飲み込み。

[メイン2] カンナ・カムイ : 「最初はよくわかんない言葉で言われて、滅茶苦茶押しかけてきてこわかった」

[メイン2] ルシード・グランセニック : 「うぐっ!」

[メイン2] カンナ・カムイ : 「でも、今は…そういうの、カッコいいと思う」

[メイン2] ルシード・グランセニック : …こ、怖がらせてたか。夢中になりすぎるのは、悪い癖だ

[メイン2] カンナ・カムイ : 目をキラキラとさせながら、そんな事を言う。

[メイン2] ルシード・グランセニック : 「……ハハ、可愛い女の子の前なら、カッコつけないとね」

[メイン2] ルシード・グランセニック : 僕も、こんなナリで男だしさ。と微笑みながら

[メイン2] カンナ・カムイ : 「むぅん」
可愛いと言われ、ピンと来ていないのか恥ずかしいのか。
ほっぺをむにむにとさせながら。

[メイン2] カンナ・カムイ : 「それなら、うん」

[メイン2] カンナ・カムイ : 「……一緒に来てくれないかな、闘わないためにも」

[メイン2] カンナ・カムイ : どうかな、と…首を傾げつつ。

[メイン2] ルシード・グランセニック : 「……よし、大賛成だ。僕も協力させてもらうよ」

[メイン2] カンナ・カムイ : 「!」

[メイン2] カンナ・カムイ : 「やったーー!ありがとう!」
ぴょいぴょい、その場で跳びながら喜んで。

[メイン2] ルシード・グランセニック : 「そんなに喜んでもらえるとは……はは、ありがたいね」

[メイン2] カンナ・カムイ : 「うん、だって……ごはんは、一人より…多い方が、美味しくなるから」

[メイン2] カンナ・カムイ : にこりと笑って、箸やお椀を掲げる。

[メイン2] ルシード・グランセニック : 「それが、君の頑張る理由なのかい?」

[メイン2] カンナ・カムイ : 「私の…頑張る理由……」

[メイン2] カンナ・カムイ : 「……うん」

[メイン2] カンナ・カムイ : ぴたり、と。一瞬止まって、すぐに答える。

[メイン2] カンナ・カムイ : 一人は、寂しいものだから。
だからこそ、私は……一人じゃないように、頑張る。

[メイン2] カンナ・カムイ : その姿を見て、”お父さん”に認めてもらう。

[メイン2] カンナ・カムイ : だから、やる。

[メイン2] ルシード・グランセニック : 幼く蒼きに映るのは、微笑ましくも感じられる親へと想いと…孤独への、恐怖に似た悲しみだ
それを、見たからには…

[メイン2] ルシード・グランセニック : 「うん、なら。僕も頑張らないとね」

[メイン2] ルシード・グランセニック : 拙い理想が、壊されない様に
暖かさをくれる笑顔が、曇らない様に

[メイン2] ルシード・グランセニック : ルシードは決意を固める

[メイン2]   : その時─────。

[メイン2]   : ガコォオオオンッ!!

[メイン2]   : 近くにあったマンホールが、勢いよく宙へ飛び上がる。

[メイン2]   : 凝視すると、そのマンホールは大きく湾曲していた。
まるで、下から何か強い力によって吹き飛ばされたかのように。

[メイン2] カンナ・カムイ : 「!?」

[メイン2] カンナ・カムイ : その轟音に、体を震わせるが。
どうやらマンホールが吹き飛んだあと、らしい。

[メイン2] 犬飼伊介 : 「フゥッ……!フゥッ……!!」

[メイン2] 犬飼伊介 : そこから、1人の女性が現れる。
鬼のような形相で─────。

[メイン2] カンナ・カムイ : 「何があったんだろう…?覗いてくるー!」

[メイン2] ルシード・グランセニック : 「なっ──」

[メイン2] 犬飼伊介 : ルシードの鼻には、あの香水の匂いはもう感じなかった。

[メイン2] ルシード・グランセニック : 「待つんだ、カンナ!ソイツに近寄ったら──」

[メイン2] カンナ・カムイ : そのまま、好奇心のあるままに……と。
それよりも、前に。

[メイン2] 犬飼伊介 : 彼女に纏わりつくは、『敗北』の下水の臭い、ただそれだけだった。

[メイン2] 犬飼伊介 : ギロリ。

[メイン2] カンナ・カムイ : 「……え?あの時のお姉さん…… んむ」

[メイン2] 犬飼伊介 : カンナの接近を察知し、本能的に拳を─────。

[メイン2] 犬飼伊介 : ズゴォォオオオッ。

[メイン2] カンナ・カムイ : 抑制するその声に、振り向いて。
その”隙”。

[メイン2] 犬飼伊介 : 裏拳。オートバイクであれば軽く粉々にしてしまえるような、重たい一撃。

[メイン2] カンナ・カムイ : それを、暗殺者である犬飼は本能的に読み取ったのか定かではないが。
いつかのように竜の鱗にする暇もなく。

[メイン2] ルシード・グランセニック : 動揺に、そして一瞬よぎった恐怖が元で、引き止められずに、手を伸ばしたまま、カンナを行かせてしまった

[メイン2] 犬飼伊介 : そうして、その衝撃を利用し
桃色の『暗殺者』は大きく飛躍し、二人の間へ着地する。

[メイン2] ルシード・グランセニック : 結果、嗚呼

[メイン2] 犬飼伊介 : 「くっさ……!!くっさッ!!ああもうッ!!!」

[メイン2] 犬飼伊介 : 「イライラするッッッ!!!!」

[メイン2] 犬飼伊介 : 唸り声のような低い声を鳴らしながら吠える。

[メイン2] カンナ・カムイ : 瞬間的に、二人の合間へと彼女が立った。

[メイン2] カンナ・カムイ : 「えっと…どうしたの…?」

[メイン2] 犬飼伊介 : その表情には、『怒り』一色。
何もかも思い通りにいかないことに対する、純粋な『怒り』。

[メイン2] カンナ・カムイ : そんな、怒りの表情をする彼女に。
近づいているまま、無垢な表情で答える。

[メイン2] カンナ・カムイ : その顔は、『敗北』の色など知らないような、穢れなき色。

[メイン2] 犬飼伊介 : 「…………あ゛ァん……?」
後ろを少し振り向き、カンナを見下ろすように、睨む。

[メイン2] ルシード・グランセニック : 必死に、この距離での対応策を考える。
加速した混乱のまま、思わずと拳を握り

[メイン2] 犬飼伊介 : 「どうしたかってぇ~?そういうこと、聞いちゃうわけぇ~?」

[メイン2] 犬飼伊介 : 「あぁ~~~~~ん??」

[メイン2] ルシード・グランセニック : 「犬飼ッ!お前の相手は、僕だろう!」

[メイン2] 犬飼伊介 : 苛立ちが、伊介の言葉を強くする。

[メイン2] ルシード・グランセニック : 踏み込んで、せめてカンナから距離を引き剥がす為に殴りかる

[メイン2] 犬飼伊介 : 前方より聞こえた男の声に反応し、ニヤりと笑う。

[メイン2] 犬飼伊介 : 「……ふぅ~ん……?へぇ~?……へぇえ~~~~??」

[メイン2] カンナ・カムイ : 「だって、怒ってるのは……よくないよ?」

[メイン2] 犬飼伊介 : 「随分と、『余裕』の無い表情ねぇ?……ルシードォ!!」

[メイン2] ルシード・グランセニック : 「カンナ、こいつはダメだ!今すぐ離れろ!!」

[メイン2] 犬飼伊介 : 瞬時に、カンナの小さな体を、女生徒は思えない程の怪力で持ち上げ

[メイン2] 犬飼伊介 : その首を、片腕で絞めつける。

[メイン2] カンナ・カムイ : 犬飼とカンナの距離は、目と鼻の先ほど。
それが、さらに狭まる。

[メイン2] 犬飼伊介 : ギチチチチ……と、力を強める音を当てながら。

[メイン2] カンナ・カムイ : 「…ダメ?────ッ」

[メイン2] ルシード・グランセニック : 「その手を……離せェェッ!!」

[メイン2] カンナ・カムイ : ”人”とは思えないような、”竜”のごとき万力で首を絞められる。

[メイン2] 犬飼伊介 : 「なぁにぃ~~?どうしたのかしらぁ~~?ルシードォ!ええ~~??随分と焦ってる表情じゃないのぉ~??」

[メイン2] カンナ・カムイ : 「が、ッ、あ……!」

[メイン2] ルシード・グランセニック : 必死の形相で、無様に突撃する。
あの女の怪力は、散々この身で味わった

[メイン2] ルシード・グランセニック : カンナに、その痛みを与える訳には…!!

[メイン2] 犬飼伊介 : 「あ~~~そうねぇ~~~?アンタぁ……このガキに求愛してたわねぇ~~?」

[メイン2] カンナ・カムイ : ぷらぷらと、足は宙を描き。
何度も掴む腕を叩くが、そこに力は籠められない。

[メイン2] 犬飼伊介 : 「あらぁ?そこから動くつもり~?ふぅ~ん?」
ルシードをじっと睨む付け。

[メイン2] 犬飼伊介 : 「そうしたらこの子、ど~~なっちゃうかしらねぇ~~??」

[メイン2] ルシード・グランセニック : 「っ!?」

[メイン2] 犬飼伊介 : ギチチチチチッ……!!!と、より強く締め付ける。

[メイン2] カンナ・カムイ : ……っ…!?なんだろう、この人っ……!
強くて……それに……怖い……!?

[メイン2] カンナ・カムイ : 「っぐ、ぁあ、か、ぁ……っ、いた、い……」

[メイン2] 犬飼伊介 : ああもう何もかもが腹が立つッ!!死んでしまえ!全員!この場にいる奴ら全員!!一人残らずッ!

[メイン2] ルシード・グランセニック : 「やめろ、犬飼!!やめてくれ!!カンナはお前にも懐いてただろう!?」
「その娘は純粋な、ただの子供だ!!」

[メイン2] 犬飼伊介 : あっはぁあ!!さっきのイライラが解消されていくようだわぁ~?
そうよ、アタシは最強の暗殺者なわけぇ~、アタシが『上』で、コイツらが『下』
そうじゃなきゃやってらんないのよぉおお!!

[メイン2] 犬飼伊介 : 「あァん……?」

[メイン2] カンナ・カムイ : 呻き声のようなその声と、涙目を伴いながら。
そこで初めて、”死”を想起してしまいそうになる。

[メイン2] 犬飼伊介 : ルシードをじっと睨み。

[メイン2] 犬飼伊介 : 「そうねぇ~?懐いてたわねぇ?」

[メイン2] 犬飼伊介 : 「でも─────」

[メイン2] 犬飼伊介 :  

[メイン2] 犬飼伊介 :  

[メイン2] 犬飼伊介 :  

[メイン2] 犬飼伊介 : 「─────所詮は『赤の他人』じゃなぁ~い?」

[メイン2] 犬飼伊介 :  

[メイン2] 犬飼伊介 :  

[メイン2] 犬飼伊介 :  

[メイン2] 犬飼伊介 : 悪魔のような笑みを浮かべ、ルシードを嘲笑うかのように。

[メイン2] 犬飼伊介 : カンナを絞め殺そうとする。

[メイン2] ルシード・グランセニック : 「お前、お前は────ッ!!」

[メイン2] カンナ・カムイ : 「それ、は、っ…」

[メイン2] カンナ・カムイ : 涙目で、けれど犬飼の方へと向きながら。

[メイン2] 犬飼伊介 : 「だってそうでしょぉ~??え~~~?」

[メイン2] カンナ・カムイ : …いたい、けど…でも……それは…

[メイン2] 犬飼伊介 : 「大切なのは『家族』!!」

[メイン2] 犬飼伊介 : 「それ以外は、ど~~~~~~~~~~~~~だっていいッ!!」

[メイン2] 犬飼伊介 : 「何か間違ったこと、伊介言ってるぅ~~~~~??」

[メイン2] カンナ・カムイ : 言い返そうと、犬飼へと腕を伸ばし────

[メイン2] カンナ・カムイ : ぷつん、と。

[メイン2] ルシード・グランセニック : 「極端すぎるだろう!?それじゃあ、閉じたまんまで……あ」

[メイン2] カンナ・カムイ : ────あがいていた足や腕が、だらり。

[メイン2] ルシード・グランセニック : それは、まるで

[メイン2] カンナ・カムイ : 力が籠められずに、そこに在った。

[メイン2] ルシード・グランセニック : 事切れて、しまったみたいで

[メイン2] 犬飼伊介 : 「……あっはぁ?あららららぁ~~~??ほぉらルシードぉ、見える~~?」

[メイン2] 犬飼伊介 : 「死んじゃった❤」

[メイン2] 犬飼伊介 : 血塗れの悪魔は、ほくそ笑む。

[メイン2] 犬飼伊介 : そう言い、カンナの体をルシードの足元へ投げる。

[メイン2] ルシード・グランセニック : 転がる体を、眺めることしかできない自分が

[メイン2] ルシード・グランセニック : 彼女を、そうした奴が

[メイン2] 犬飼伊介 : そうして、伊介はルシードへ向かって、歩む、歩む、歩む。

[メイン2] ルシード・グランセニック : 許せなくて

[メイン2] 犬飼伊介 : ボキッ。ボキッ。

[メイン2] 犬飼伊介 : 拳の、首の骨を鳴らしながら。

[メイン2] 犬飼伊介 : 空気が淀む。殺しの場へと、冷たい空気に。

[メイン2] ルシード・グランセニック : 音が聞こえる、あんなにも恐ろしかった足音が

[メイン2] 犬飼伊介 : 「ねぇ~~~?ルシードぉ~~? ……今、ど~~~んな気持ちぃ~~~?」

[メイン2] ルシード・グランセニック : 死の行脚が、僕を踏み潰そうとしていると、認識しても、未だにカンナから目を離せない

[メイン2] 犬飼伊介 : 「─────そぉらァアアッ!!!」

[メイン2] 犬飼伊介 : ルシードへ向けて、鋭い蹴りの一撃をお見舞いしようとし。

[メイン2] ルシード・グランセニック : 「…すまない、カンナ」

[メイン2] ルシード・グランセニック :  

[メイン2] ルシード・グランセニック : 「僕は、君との約束をこんなにも早く破る事になってしまった」

[メイン2] ルシード・グランセニック :  

[メイン2] ルシード・グランセニック : 放たれた脚部へ向かい、手をかざす
それだけで、ありえない方向へと、ベクトルが傾き、蹴りの方向を彼方へ逸らす

[メイン2] 犬飼伊介 : 「─────ッッ!!?」

[メイン2] 犬飼伊介 : なッ……!?狙いが逸れ……!?いや……違うッ……!?!?

[メイン2] 犬飼伊介 : また、あの『反発』……!?

[メイン2] 犬飼伊介 : 「ぐッ………!?」
ルシードを至近距離で睨みつけるも─────。

[メイン2] 犬飼伊介 : ─────ッ……!?……何よ、コイツ……!?さっきまでのアイツと……違うッ……!?

[メイン2] ルシード・グランセニック : それだけでは、ない
周囲の食器、厨房の包丁、或いは犬飼のアクセサリー

[メイン2] 犬飼伊介 : ……何よ……!!何よ何よ……!!イライラする!!ムカつくッ……!!!
また伊介の思い通りにいかないってわけぇ!?!?

[メイン2] 犬飼伊介 : そんなこと─────あってたまるかァッ……!!!
……!?

[メイン2] 犬飼伊介 : 「な、何よ……!?」

[メイン2] 犬飼伊介 : 辺りの異変に注意を配る。アイツを中心に、万物が動いている……!?
……意味が!わっかんないんだけどぉ~~!!!

[メイン2] 犬飼伊介 : 「これ以上伊介を……イラつかせんなっつってんのよォォオッ!!!」
身を翻し、ルシードの顔面へ流れるように、拳を叩き入れようとし。

[メイン2] ルシード・グランセニック : 今度は、”拳“が止まる

[メイン2] 犬飼伊介 : 「ッ………!!?」

[メイン2] 犬飼伊介 : な、何、これッ……!?

[メイン2] ルシード・グランセニック : 磁石と同じ、見えない力の反発が、肉弾攻撃を全く許さず阻害する

[メイン2] ルシード・グランセニック : 前と違い、吹き飛ばされないのは──

[メイン2] 犬飼伊介 : 犬飼伊介の怪力は、並の成人男性程度では止められない。
鍛え抜かれた者でないと止めることは不可能。
しかし─────止められた。

[メイン2] ルシード・グランセニック : 能力発動により、ルシード本体が強化されたからに違いない。
発動値に至った怪物性は、留まることを知らず跳ね上がる

[メイン2] 犬飼伊介 : 「ぐッ……!!ぐゥッ………!!?」
拳を移動させようとするも、まるでそこに固定されたかのように、全く動かず。

[メイン2] ルシード・グランセニック : 「……最初から、こうしておくべきだった」
「手札を晒すことや、誰かを傷つけること、勝利に怯えず、背負っていれば」

[メイン2] ルシード・グランセニック : 彼女は、こんな目に遭わずに済んだ

[メイン2] ルシード・グランセニック : 許せない、許せない

[メイン2] ルシード・グランセニック : お前が、こんな企画を起こした黒幕が、何より……

[メイン2] ルシード・グランセニック : 臆病な自分が、なによりも──ッ!!!

[メイン2] ルシード・グランセニック : 八つ当たりをする様に、斥力を極限まで纏わせた拳を、動かない犬飼に向け、解き放つ

[メイン2] ルシード・グランセニック : 磁力による加速と、動かない対象へと解き放った事実、この二つを持って、必殺の一撃を当ててトドメに係る

[メイン2] 犬飼伊介 : 「ぐほォァアアッッ……!?!」
その瞬閃の拳は、伊介の鍛え抜かれた体幹を打ち砕くように─────。
伊介の顔中央に、渾身の一撃として加えられる。

[メイン2] 犬飼伊介 : ぐらり、脳が大きく揺さぶられる。

[メイン2] ルシード・グランセニック : 爆発、それに似た音が響く
爽快か?

[メイン2] ルシード・グランセニック : 「……そんなわけがないだろう」

[メイン2] 犬飼伊介 : 鼻血がまるでスプリンクラーのように吹き出る、まるでスローモーションのように、伊介の体もゆっくりと倒れ、倒れ、倒れ─────。

[メイン2] 犬飼伊介 : 「─────ガァアアアアアアアッッ!!!!」

[メイン2] ルシード・グランセニック : こんな事の、一体何がいいっていうんだ?何が楽しかったのか、さっぱり理解ができやしない

[メイン2] 犬飼伊介 : 意識を失った、"悪魔"。

[メイン2] ルシード・グランセニック : まだ、続ける理由さえ

[メイン2] ルシード・グランセニック : ルシードは全くわからない、わかりたくもないと思ってさえいる

[メイン2] 犬飼伊介 : 脳による直接命令はほぼ不可能な状況。

[メイン2] 犬飼伊介 : 伊介という『暗殺者』の体を突き動かすは─────。
─────怒り、苛立ち、焦り……暗殺者の誇り、家族愛、生への執着心。

[メイン2] 犬飼伊介 : 脊髄により動かされる伊介は、最後の─────

[メイン2] 犬飼伊介 :
    ヴェンデッタ
─────"逆襲劇"に出ようとする。

[メイン2] 犬飼伊介 : 下から突き上げられる、悪魔の一撃。
獰猛な獣による、全てを打ち砕く、破壊の拳。

[メイン2] 犬飼伊介 : 磁力による制止も全て、『想い』により跳ね返さんとし
突き上げる、突き上げる、突き上げる。

[メイン2] 犬飼伊介 : その拳は、ルシードの顎へ届─────。

[メイン2] ルシード・グランセニック : 届く、そして悪魔の拳は、錬金術師の頭部をあっけなく───

[メイン2] ルシード・グランセニック : 揺らぎもさせず、当然と備えていた引力と、磁力を利用した防壁に阻まれる。

[メイン2] ルシード・グランセニック : 逆襲譚とは、光に奪われた者たちの敗者の牙

[メイン2] ルシード・グランセニック : ただ、強者を屠らんとするソレならば、応報に抗うだけの、想いを、愛を忘れた物ならば

[メイン2] ルシード・グランセニック : 愛の為戦う錬金術師に、届く道理などありはしない

[メイン2] ルシード・グランセニック : 「……お返しだ」

[メイン2] ルシード・グランセニック : 建造物全体が、ルシードを中心として揺れ始める

[メイン2] 犬飼伊介 : ─────手応えは、またしても、ない。

[メイン2] 犬飼伊介 : 白目の獣は、本能で理解する。

[メイン2] 犬飼伊介 : 一撃は、与えられなかった。

[メイン2] 犬飼伊介 : ─────もう次に訪れるは……『死』。

[メイン2] 犬飼伊介 : 逃れるための走馬灯が、伊介の脊髄から搾り出される。

[メイン2] ルシード・グランセニック : 周囲に電磁が迸り、拳の周りを覆っていく

[メイン2] 犬飼伊介 : 思い起こされる、パパとママとの日々。

[メイン2] 犬飼伊介 : ………パ、パ………マ、マ………。
………………………。

……ば、いば……い………。

[メイン2] ルシード・グランセニック : “レールガン”お約束の仮想兵器
これさえも、自分の体を弾丸に、ルシードは容易く具現する

[メイン2] ルシード・グランセニック : そして──

[メイン2] カンナ・カムイ : 「ダメだよ」

[メイン2] ルシード・グランセニック : 「──」

[メイン2] ルシード・グランセニック : 「カンナ……」

[メイン2] カンナ・カムイ : 掠れて、縋るような声を、目の前の彼へと向ける。

[メイン2] ルシード・グランセニック : 怒りのままに放った拳は、犬飼の鼻先で止まる

[メイン2] ルシード・グランセニック : 衝撃操作も併用して、今は犬飼を守らせる

[メイン2] カンナ・カムイ : 「……げほっ、がはっ、…っく、う……ダメだからね、ルシード」

[メイン2] ルシード・グランセニック : 「……カンナ、こいつも、僕も、君の優しさに値う奴じゃない」

[メイン2] カンナ・カムイ : 竜とはいえ、その首に負った負傷は鋭く残る。
立ち上がれないまま、ただ声を掛ける。

[メイン2] ルシード・グランセニック : 「僕は臆病で、優しさなんか持ち合わせない、こいつは獰猛で、優しさを他の誰かに向けたりしない」

[メイン2] ルシード・グランセニック : 「──生きてちゃ、ダメな生き物なんだ」

[メイン2] ルシード・グランセニック : 先程の犬飼をなぞる様に、首を絞め、大きく上へと持ち上げる

[メイン2] カンナ・カムイ : 「……その人も、何か…”頑張る理由”が、ある…みたい、だし、それに……」

[メイン2] カンナ・カムイ : 「……そんな事したら、ルシードだって傷つくよ…?」

[メイン2] 犬飼伊介 : 犬飼伊介という女暗殺者は、ぐったりと、糸が切れた操り人形のように。
血塗れで、白目の状態で気絶しており。

[メイン2] カンナ・カムイ : 「ううん、そのお姉さんだって……傷つきながらも、頑張ってたはず…だから」
その白目を向いた彼女を、見つめて。

[メイン2] ルシード・グランセニック : 「……」

[メイン2] カンナ・カムイ : 「……だから、あの人を、そして…自分自身を…傷つけないで、あげて」

[メイン2] ルシード・グランセニック : 確かに。そうなのだろう

[メイン2] ルシード・グランセニック : 彼女とて、家族がいる。

[メイン2] ルシード・グランセニック : 「……だけど、コイツは。また君を傷つけるかもしれない」

[メイン2] カンナ・カムイ : げほごほ、詰まった言葉や息が吐き出されながら。
悪魔の手は、爪痕を残していた。

[メイン2] ルシード・グランセニック : 「そんな奴を、放っておいてもいいのかい?」今回は助かった、でも、もしも──

[メイン2] ルシード・グランセニック : 「見逃した結果、また襲いかかって来たら?」

[メイン2] カンナ・カムイ : 「…ルシードの言ってることは、間違って、無いと思う…」
体をうっぷしたまま、声だけを掛ける。

[メイン2] カンナ・カムイ : 「そのもしも、も起きてしまうかもしれない。でも────」

[メイン2] カンナ・カムイ : 「────また、助けてくれると思うから」

[メイン2] カンナ・カムイ : にこり、と笑顔だけ作った顔を向けて。

[メイン2] ルシード・グランセニック : 「……僕は、守り切れないかもしれない」
微笑みに向け、精神の奥底の恐怖を打ち明ける

[メイン2] ルシード・グランセニック : 「もしも、そうなってしまえば……僕は、この三度目の命を、永劫と呪いながら過ごすだろう」

[メイン2] ルシード・グランセニック : 恐怖、それがルシードが永遠に縛られる精神太源

[メイン2] ルシード・グランセニック : 「なによりも、僕は───」

[メイン2] ルシード・グランセニック : 君の様な、自分の様な奴と仲良くしてくれた、温かな人達を失うのが

[メイン2] ルシード・グランセニック : 「なによりも、恐ろしいんだ」

[メイン2] ルシード・グランセニック : 力が抜け、首を絞めていた犬飼を、ゆっくりと地面に降ろす

[メイン2] カンナ・カムイ : 「……」
その様子を、ゆっくりと見て。

[メイン2] カンナ・カムイ : 「……私だって、怖い」

[メイン2] カンナ・カムイ : 「せんそう、は…沢山竜も死ぬし、人も死んじゃう…だから、この状態だって、怖い」

[メイン2] ルシード・グランセニック : 「──それなら」
犬飼を、なぜ討たないのか

[メイン2] カンナ・カムイ : 「でも……私は、こうやって…諦めずに、立っていられてる」
そう、その”逆襲劇”。

[メイン2] カンナ・カムイ : 「だから、そんなのにはなりたくない…!!!」

[メイン2] カンナ・カムイ : 「……”悪魔”には、なりたくない」

[メイン2] カンナ・カムイ : 「せんそうは、みんなが仲良くなったら、へいわになる」

[メイン2] カンナ・カムイ : 「だから、私はそうする」

[メイン2] ルシード・グランセニック : 「……それは、欲張りだね」

[メイン2] ルシード・グランセニック : クスリと、少し笑って

[メイン2] ルシード・グランセニック : 「だけども、うん」

[メイン2] カンナ・カムイ : 少女が考え出した、子どもならではのちっぽけな空想。

[メイン2] カンナ・カムイ :
          リドル
けれどそれは立派な、考え。

[メイン2] カンナ・カムイ : 「……ダメ?」

[メイン2] ルシード・グランセニック : 「いいや、君の理想は、君の姿に一切劣らない美しい物だ」

[メイン2] ルシード・グランセニック : 「認めよう、竜というのは、宝物が大好きらしいしね。君が宝と呼ぶのなら、僕は勝手に壊せない」

[メイン2] カンナ・カムイ : 宝物、と言われ。
ぱぁっと顔を輝かせる。

[メイン2] カンナ・カムイ : 「……うん、やっぱり…ルシードは、私を…守ってくれるんだね」

[メイン2] カンナ・カムイ : 「お願いして、よかった」
その笑いににこり、また…微笑んで。

[メイン2] ルシード・グランセニック : 「……君に、そう言われる程の事ができたか。僕にはわからないけれど」

[メイン2] ルシード・グランセニック : 「ありがとう、カンナ。君のおかげで、僕は間違いを犯さずに済んだ」

[メイン2] カンナ・カムイ : こく、と首だけで頷いて。

[メイン2] カンナ・カムイ : 「じゃあ……運んでくれると嬉しい、あの人の分まで」
力が入らず、ぺたーんとのされたまま。

[メイン2] ルシード・グランセニック : 「ああ、ごめんごめん!!」

[メイン2] ルシード・グランセニック : 軽く磁界を操作して、透明のゆりかごを作り出し、カンナを乗せる

[メイン2] カンナ・カムイ : 「むぉん」
そのゆりかごに運ばれたまま。

[メイン2] カンナ・カムイ : 「また何か、間違えそうになったら…こら、って叱るから、だいじょぶ」
そう呟いて。
ゆっくりと瞳を閉じた。

[メイン2] ルシード・グランセニック : 「……そうか、なら安心だ」

[メイン2] ルシード・グランセニック : 籠に揺られ、宙を舞うカンナを見て
温かな視線を向けた後…

[メイン2] ルシード・グランセニック : 「……犬飼、君に謝るつもりは無いし、トドメを刺さないことを、まだ悩んでもいる」
ファミレスを後にする前に、小さな呟きを残す

[メイン2] ルシード・グランセニック : 「けれど──」

[メイン2] ルシード・グランセニック : 勝利を手にした者が、敗者に向け
祈る事が許されるのなら

[メイン2] ルシード・グランセニック : 「君にも、家族がいるのなら、こんな所で死に向かうんじゃなくて──」

[メイン2] ルシード・グランセニック : 「生きる方法を、探して欲しい」

[メイン2] ルシード・グランセニック : そのまま、揺り籠の中の竜を連れ、更にボロボロになったファミレスを立ち去った

[メイン2] ルシード・グランセニック : ……この先に何があるか、見通すことはできやしないけれど

[メイン2] ルシード・グランセニック : せめて、手を引いて歩こう

[メイン2] ルシード・グランセニック : その温かさを、失わない様に

[メイン2] ルシード・グランセニック :  

[メイン2] ルシード・グランセニック :  

[メイン2] ルシード・グランセニック :  

[メイン2] カンナ・カムイ : かちり、かちん。
物音を立てながら、目の前のモノがなくなっていく。

[メイン2] カンナ・カムイ : なくなれば継ぎ足せるであろう、それ。

[メイン2] カンナ・カムイ : ………むぅーん。

[メイン2] カンナ・カムイ : ルシードから、「君は少し休むといい、しっかりと疲れを取るためにね」と言われたので。

[メイン2] カンナ・カムイ : 同じくらい、いやそれ以上疲れていそうな犬飼を連れてきた。
ちょっと、気になる事があったから…一緒に休むために、きた。

[メイン2] 犬飼伊介 : ………って。

[メイン2] カンナ・カムイ : そして、ここがどこかというと。

[メイン2] カンナ・カムイ : ────レストラン。

[メイン2] 犬飼伊介 : いや……なぁんで伊介が子守りしてるわけぇ〜???

[メイン2] カンナ・カムイ : もぐもぐと、様々な料理を口に運びながら。

[メイン2] カンナ・カムイ : 「えーっと……名前なんだっけ」

[メイン2] 犬飼伊介 : 何もかもがイライラするんだけどぉ〜〜??
さっき殺したと思ったガキンチョもガキンチョで平然と飯食ってるしぃ
なんつーかぁ、どいつもこいつも伊助のこと舐めすぎじゃなぁ〜い???

[メイン2] カンナ・カムイ : うん、やっぱりこの店の料理はおいしい……
この人と戦ってた跡に残ってたけど、きせきてきに無事だったみたいで。

[メイン2] 犬飼伊介 : 「………チッ」

[メイン2] 犬飼伊介 : 「アタシは、伊介様、ちゃぁ〜んと様付けして呼びなさぁい?」

[メイン2] 犬飼伊介 : 苛立ちを表すように、指で机を何度も、トントンと叩きながら。

[メイン2] 犬飼伊介 : 頬杖をつき、食事するカンナを不機嫌そうな表情で眺めていた。

[メイン2] カンナ・カムイ : 「伊介。私はカンナだよ」

[メイン2] カンナ・カムイ : そんな態度と正反対に、おいしそうにご飯を口に運んでいて。

[メイン2] 犬飼伊介 : 「つぅかぁ〜〜……そもそも状況が意味分かんないっていうかぁ…… って……!!だから様付けしなさぁい!?」

[メイン2] カンナ・カムイ : 「ご飯、食べないの?体…回復すると思うよ?」
右手に茶碗、左手に箸。首をかしげながら、そう問う。

[メイン2] 犬飼伊介 : 「………」

[メイン2] 犬飼伊介 : じっと、食事に目をやり。

[メイン2] カンナ・カムイ : カンナカムイは竜である。
食物を取る事でエネルギーをすぐさま自らに費やすことが出来るため、食事を好んでいる。

[メイン2] カンナ・カムイ : 逆に言えば、人間には到底無理な事ではあるが。
それすらもわかっていないように、きょとんと。

[メイン2] 犬飼伊介 : ………まぁ?確かにぃ?
疲弊して暗殺すらできない今の伊介のコンディションを考えたらぁ?
食事を摂るのは確かにいい案だけどぉ〜

[メイン2] 犬飼伊介 : こう………!!
舐められてんのが無性に腹立つのよねぇ!!

[メイン2] カンナ・カムイ : 「……むぅ」

[メイン2] 犬飼伊介 : 「いらなぁ〜い、伊介、もっと豪華なもの食べたいしぃ〜?」

[メイン2] カンナ・カムイ : 「ご飯食べる元気もない…?」

[メイン2] 犬飼伊介 : ピン、と自分の目の前に並ぶ唐揚げを指で軽く弾く。

[メイン2] カンナ・カムイ : 「むっ」

[メイン2] カンナ・カムイ : 箸でそれを刺し、受け止める。

[メイン2] 犬飼伊介 : 「はぁ〜???元気ありまくりなんですけどぉ〜??なんならここでお前ぶっ殺せるんですけどぉ?」

[メイン2] カンナ・カムイ : そのままひょいと口に運んで。

[メイン2] 犬飼伊介 : と、口だけの威勢を放つ。

[メイン2] カンナ・カムイ : 「…どうして?」

[メイン2] 犬飼伊介 : 「……はぁ?どうしてって?」

[メイン2] カンナ・カムイ : もぐもぐと、唐揚げを食べこんで。

[メイン2] カンナ・カムイ : 「どうして、私を殺そうとするの?」

[メイン2] 犬飼伊介 : 「はぁ〜〜??だって当たり前じゃなぁ〜い?「最後の一人」になるまで戦わないと、ここから脱出できないんでしょぉ〜?」

[メイン2] 犬飼伊介 : 「つーかぁ……どうして?なのはこっちなんだけどぉ?」

[メイン2] 犬飼伊介 : そう言い、ナイフを手に取り
思い切りテーブルに突き刺す。

[メイン2] 犬飼伊介 : 「────バカにしてんのぉ?伊介のことぉ?」
ジロリと、猛禽類のような瞳でカンナを睨む。

[メイン2] カンナ・カムイ : 「うぉっ」
びくん、とその物音に体を震えさせて。

[メイン2] 犬飼伊介 : 「アタシはアンタも、あの変態野郎も殺そうとした」

[メイン2] カンナ・カムイ : 「……馬鹿にする?」

[メイン2] 犬飼伊介 : 「言っちゃえばぁ?伊介はアンタらの「敵」でしょぉ〜?それをな〜んで生かしちゃってるわけぇ?」

[メイン2] 犬飼伊介 : 「アタシを殺せばここから脱出する方法に一歩近づけるでしょぉ〜?違う〜?」

[メイン2] 犬飼伊介 : イライラした表情で、怒りを女児へぶつけるように吐き捨て。

[メイン2] 犬飼伊介 : 「それしないってことはぁ〜〜……要は伊介は、アンタらが手を下すまでもなく、適当に丸め込める「馬鹿な女」って思ってるわけでしょ〜〜??」

[メイン2] カンナ・カムイ : たしかに、伊介の言う通り…生き残るためにに頑張るのであれば、それはその通りで。他人を排除して、残った一つが立ち続けていれば正解だ。

[メイン2] 犬飼伊介 : 血筋が伊介のこめかみに、ビキリと浮かび。

[メイン2] カンナ・カムイ : 「わたしは、伊介の事がこわいと思ってる」

[メイン2] 犬飼伊介 : 実際〜?アタシ、馬鹿かどうかで言ったらぁ?まぁ〜……学校の授業とか、心底ど〜でもいい〜って思ってるしぃ?
そういう面では学がないって言えるかもだけどぉ

[メイン2] カンナ・カムイ : 「それに何より、今ぐってやったら、私は殺されるかもしれない」

[メイン2] 犬飼伊介 : 自分で言っておいてなんだけどぉ、それはそれで腹立つんですけどぉ?

[メイン2] 犬飼伊介 : 「………ふぅん?こわいのに生かしてるわけぇ?」

[メイン2] カンナ・カムイ : ルシードがいないから、守ってもらう人もいない。

[メイン2] 犬飼伊介 : 「じゃあ────改めて聞くけどぉ?」

[メイン2] カンナ・カムイ : この場は、私一人だ。

[メイン2] 犬飼伊介 : 両手で頬杖をつき、カンナを真っ直ぐ見つめ。

[メイン2] 犬飼伊介 : 「────なぁんでアタシ、生かしたわけぇ?」

[メイン2] 犬飼伊介 :
    リドル
悪魔の”問いかけ”

[メイン2] カンナ・カムイ : 「────伊介は、”人”だから」

[メイン2] カンナ・カムイ : その問いかけに。

[メイン2] 犬飼伊介 : 「………人ぉ?」
目を細め。

[メイン2] カンナ・カムイ : じっと、青い目で見返す。

[メイン2] カンナ・カムイ : 「そう、人」

[メイン2] 犬飼伊介 : 「なぁにそれぇ?じゃあじゃあ、アンタは例えどんな”人”だろうと助けるわけぇ?」

[メイン2] 犬飼伊介 : 「暗殺者でもぉ?犯罪者でもぉ?殺人鬼でもぉ?テロリストでもぉ?」

[メイン2] カンナ・カムイ : 「……うん、私は…怖い人でも、気持ち悪い人でも、ヘンな人でも、お話したい」

[メイン2] 犬飼伊介 : 「……………」

[メイン2] カンナ・カムイ : 「人は弱くて、強くなるためには誰かを食らう獣になる」
お姉さんが言ってた言葉を思い出す。

[メイン2] カンナ・カムイ : ときには────”悪魔”すらに。

[メイン2] カンナ・カムイ : 「それでも、中は傷ついて、壊れやすくなる」
ルシードが言っていた言葉を思い出す。

[メイン2] カンナ・カムイ : だからこそ、理解できない物には投げかけるのだ。

[メイン2] カンナ・カムイ : 強くあるだけなら、喰らえばいい。
弱い者を踏みつけ、殺せばいい。

[メイン2] カンナ・カムイ : それを選ばない”人”が送る────

[メイン2] カンナ・カムイ :
    ヒト   対話
────悪魔の”リドル”

[メイン2] カンナ・カムイ : 「それは、人でも、竜でも…同じなんだと思う」

[メイン2] カンナ・カムイ : 箸と茶碗を、かつんと置く。

[メイン2] カンナ・カムイ : 「……伊介だって、その…”優しさ”があるから、私を助けてくれたんでしょ?」

[メイン2] 犬飼伊介 : 「……優しさぁ?……アタシがぁ?」

[メイン2] カンナ・カムイ : 「だって」

[メイン2] カンナ・カムイ : 「戦う前、私にビデオを見せないようにしてくれた」

[メイン2] カンナ・カムイ : じっと、目を見つめたまま。

[メイン2] カンナ・カムイ : 「それとも……伊介は、ふまん?優しいことが」

[メイン2] 犬飼伊介 : 「………ちょぉ〜っと胸糞悪かっただけだしぃ?伊助ぇ〜、血見るのそんなに好きじゃないしぃ〜」
指で毛先をくるくると回しながら。

[メイン2] カンナ・カムイ : ぽてっと、手をテーブルの上に置いたまま。

[メイン2] 犬飼伊介 : 実際には────カンナに、幼い頃の自分の姿を重ねたからだ。
まともな教育を受けさせてもらえず、かと言って暴力を直接振るわれたわけじゃない。

[メイン2] 犬飼伊介 : ────ネグレクト。

[メイン2] 犬飼伊介 : 放置されてきた、ずっと、親の愛も受けず。

[メイン2] 犬飼伊介 : その結果、弟は死んだ。
餓死だ。不幸な末路。弱い人間は、生きる術を見つけることすらできない。

[メイン2] 犬飼伊介 : そうしてアタシもネグレクトによって、死に掛けた。
どうすることもできない無力さという絶望の中────。

[メイン2] 犬飼伊介 : ───そんな中、『家族』に出会った。

[メイン2] 犬飼伊介 : たまたまだった、隣に住んでいたのが『暗殺者』で
そして伊介もたまたま殺しの技にセンスがあった。
たったそれだけの理由で。

[メイン2] 犬飼伊介 : “パパ”と”ママ”は、アタシを助けてくれた。
─────『家族』こそが、この世で最も大事なものだと、アタシも知った。

[メイン2] 犬飼伊介 : 『家族』以外のことなんてどうでもよくて。
だからこそ、暗殺者としても相応しかったんでしょうねぇ?
仕事を淡々とこなしてきた、全部、ぜ〜〜〜んぶ『家族』の幸せの為に。

[メイン2] 犬飼伊介 : だからアタシも、『家族』のためにこの地獄から抜け出す。
何が何でも、例えどんな相手でも───。
だって、『家族』以外は、どうだっていい………
アタシは……そう、思っていた。

[メイン2] 犬飼伊介 : 目を細め、カンナをじっと見つめる。

[メイン2] 犬飼伊介 : あまりにも純粋で、あまりにも不幸な存在。

[メイン2] 犬飼伊介 : こんなガキ、『家族』でもなんでもないんだから。
全然殺したって構わないし、このガキの理屈に耳を貸す必要なんて微塵もありはしない。
そう、思っているのに。

[メイン2] 犬飼伊介 : ────結果、あの時は……殺せなかったし。
今もイライラするのに……殺せる気も、しないし。

[メイン2] カンナ・カムイ : 「あのね、伊介」

[メイン2] 犬飼伊介 : ………かつての……アタシ。

[メイン2] 犬飼伊介 : 「………何よ」

[メイン2] カンナ・カムイ : 目を見つめる彼女に、口を発する。

[メイン2] カンナ・カムイ : 「伊介が言ってた、勝ち残った時のご褒美」

[メイン2] カンナ・カムイ : 「”帰れる”ことと、もう一つあったの…覚えてる?」

[メイン2] 犬飼伊介 : 「……………」

[メイン2] 犬飼伊介 : 「────願いを一つだけ叶えられるでしょぉ?さすがに伊助でも覚えてるしぃ〜」

[メイン2] カンナ・カムイ : こくり、と頷いて。

[メイン2] カンナ・カムイ : 「私はね、そっちが最初欲しかった」

[メイン2] カンナ・カムイ : 「今の私は、弱い」

[メイン2] カンナ・カムイ : それこそ……力でも、どうにかできないことはあると知れるくらいには。
”竜”が”人”と同じ、立場に立つくらいには。

[メイン2] カンナ・カムイ : 「だから……それを手に入れて、もっと強くなったら」

[メイン2] カンナ・カムイ : そうして、カンナの目が、ゆらぐ。

[メイン2] カンナ・カムイ : 「────褒められると思ったの、”お父さん”に」

[メイン2] 犬飼伊介 : 「…………!」

[メイン2] カンナ・カムイ : そこにある瞳は、”竜”のそれではない。

[メイン2] 犬飼伊介 : 『家族』の、ために………。

[メイン2] カンナ・カムイ : 親の愛も受けずに、まともな教育を受けさせられたわけではない。

[メイン2] カンナ・カムイ : ただ一言、『強くあれ』とだけ言われてきた竜の。

[メイン2] カンナ・カムイ : ────”子ども”の目。

[メイン2] 犬飼伊介 : 「………そう……」
視線を逸らし、毛先を弄る。

[メイン2] カンナ・カムイ : 「お父さんは、私を見てくれないから……どうにかして、見てほしかった」

[メイン2] カンナ・カムイ : カンナの父親、キムンカムイ。
その価値観は、強者のソレ。『竜』の視点。
弱者は踏みつぶし、強者とは身を削り戦い合う。

[メイン2] 犬飼伊介 : 「ふぅ〜〜ん……?そう……」
ますます、他人事に思えなくなっていく。

[メイン2] カンナ・カムイ : その価値観は例え自らの子どもですら同じ。
『強くないなら、強くなるまで』
『そうなって初めて、”竜の仲間”として迎え入れよう』

[メイン2] カンナ・カムイ : 「だから他の人とも、いっぱい戦えば……きっと私にとって『最善』になると思った」

[メイン2] カンナ・カムイ : 「でも」

[メイン2] カンナ・カムイ : 「……一人で食べるご飯はおいしくないってこと、思い出したから」

[メイン2] 犬飼伊介 : 「……………」

[メイン2] 犬飼伊介 : ……違うわねぇ。

[メイン2] 犬飼伊介 : このガキは…………この子は、決して、かつてのアタシとは、違う。

[メイン2] 犬飼伊介 : 何よ。

[メイン2] 犬飼伊介 : 強いじゃないの。

[メイン2]   :  

[メイン2]   : ─────竜は一寸にして昇天の気あり。

[メイン2]   :  

[メイン2] 犬飼伊介 : なんか教科書に、それっぽ〜い言葉、書いてあった気がするけどぉ。

[メイン2] 犬飼伊介 : 忘れたぁ〜。

[メイン2] 犬飼伊介 : 「………ふん、それなら〜?まぁ〜?」

[メイン2] 犬飼伊介 : フォークを片手に、唐揚げに突き刺す。

[メイン2] 犬飼伊介 : 「ど〜〜〜〜してもって言うならぁ?一緒に食べてあげてもいいわよぉ〜?」

[メイン2] 犬飼伊介 : そうしてそのジャンクフードを自分の口へ運ぶ。

[メイン2] 犬飼伊介 : 「……味は……まぁまぁじゃな〜い?」

[メイン2] カンナ・カムイ : 「……!」

[メイン2] カンナ・カムイ : 「やったーー!!!」

[メイン2] 犬飼伊介 : 「……まぁ〜?”人”は確かにぃ?一人じゃ生きていけないっていうのは〜?その通りだしぃ……って!うっさいんですけどぉ〜!!?」

[メイン2] カンナ・カムイ : バンザイして大喜び。その顔にはにっこりと、笑顔が付いていて。

[メイン2] カンナ・カムイ : 「む……伊介と食べるから、おいしいと思う」
もぐもぐ、同じ唐揚げを食べながら。

[メイン2] 犬飼伊介 : 「なっ……!ちょっ、何よその顔〜!?別にぃ〜?伊介はただ〜?体力回復のためにぃ〜?……もぐもぐ……」

[メイン2] カンナ・カムイ : 「……むう、怒った?」
ちら、と覗き込む。

[メイン2] 犬飼伊介 : 「……ごっくん……食べてるだけだしぃ〜〜〜?」

[メイン2] 犬飼伊介 : 「っ………」

[メイン2] 犬飼伊介 : カンナと視線が合い、思わず逸らす。

[メイン2] 犬飼伊介 : 「……べっつにぃ?……今のは……”逆鱗”じゃないしぃ?」

[メイン2] 犬飼伊介 : 毛先を指でくるくると弄りながら。

[メイン2] カンナ・カムイ : 「……それなら、よかった…」

[メイン2] カンナ・カムイ : にへら、とまた笑いながら。

[メイン2] 犬飼伊介 : 「………言っておくけどぉ、一つ忠告するわよぉ?」

[メイン2] 犬飼伊介 : 「ここはまだ”地獄”……な〜〜んにも終わってないのよぉ?人と人は殺し合い続ける、お互いの『最善』のために」

[メイン2] 犬飼伊介 : カンナを、じっと見つめ。

[メイン2] 犬飼伊介 : 「………それでも」

[メイン2] 犬飼伊介 : 「誰かと一緒にご飯食べることができるくらい、仲良くなりたいわけぇ?」
ポテトにフォークを突き刺し、そのまま自分の口へ運びながら。

[メイン2] カンナ・カムイ : 「……うん」

[メイン2] カンナ・カムイ : 「だって……」

[メイン2] カンナ・カムイ : 『一人は寂しいから』

[メイン2] カンナ・カムイ : 言いかけて、口が止まる。

[メイン2] カンナ・カムイ : カンナはその心を吐けるほど、我儘らしいことを聞いてもらった覚えはないから。
だからこそ、言い方が思いつかないのだ。

[メイン2] 犬飼伊介 : 「………そ。」
カンナの瞳を見て、目を閉じる。

[メイン2] カンナ・カムイ : ずっと、そのもやもやとした気持ちが口から出ていかないので。
口をぱくぱくとさせたまま。

[メイン2] 犬飼伊介 : 「………ここからが正念場よぉ?……覚悟はできてるぅ〜?」

[メイン2] 犬飼伊介 : 「小さな、勇敢な……ドラゴンちゃん♪」

[メイン2] 犬飼伊介 : そう……ここからが、この子にとっての……乗り越えなければならない

[メイン2]   :

[メイン2]   : ───────”登竜門”

[メイン2]   :  

[メイン2] 犬飼伊介 : 「……ま〜ぁ〜?一人じゃ無理ってんならぁ〜?」

[メイン2] 犬飼伊介 : 毛先を無限にくるくると回しながら。

[メイン2] カンナ・カムイ : 「…うん」

[メイン2] 犬飼伊介 : 「伊介が〜?手を〜〜?貸してあげないこともぉ〜?無くもなくもないけどぉ〜〜?」

[メイン2] カンナ・カムイ : 伊介の空いた手を、小さな両手で握りこむ。

[メイン2] カンナ・カムイ : 「伊介は強くてこわいから、貸してほしい」

[メイン2] 犬飼伊介 : 『家族』のために戦う。
その色や、形は違えど────。

[メイン2] 犬飼伊介 : ────まぁ?『家族』として見なすには、十分なんじゃな〜い?

[メイン2] 犬飼伊介 : 「………ふふ」

[メイン2] 犬飼伊介 : 「それじゃあ〜〜……」

[メイン2] 犬飼伊介 : カンナにほくそ笑み。

[メイン2] 犬飼伊介 :  

[メイン2] 犬飼伊介 :  

[メイン2] 犬飼伊介 :  

[メイン2] 犬飼伊介 : 「─────”悪魔”の契約、成立ね♪」

[メイン2] 犬飼伊介 :  

[メイン2] 犬飼伊介 :  

[メイン2] 犬飼伊介 :  

[メイン2] 犬飼伊介 : そうして、カンナの顔へ手を伸ばし────。

[メイン2] 犬飼伊介 : ────────

[メイン2] 犬飼伊介 : ─────ふきふき。

[メイン2] 犬飼伊介 : 「ちょっとぉ〜?お口にソースついてるわよぉ?」

[メイン2] カンナ・カムイ : 「むぃぃ」
ふかれふかれ。

[メイン2] カンナ・カムイ : 「ついちゃってた…?」

[メイン2] カンナ・カムイ : 目を瞑りながら、口を突き出して。

[メイン2] 犬飼伊介 : 「ったくぅ……食べ物は逃げないんだからゆっくり食べなさい〜?……ふふ」

[メイン2] 犬飼伊介 : ─────ま、こういうのも?悪くないんじゃないかしらぁ?

[メイン2] 犬飼伊介 : 『娘』が伊介にできたら、きっとこんな感じなのかしらねぇ〜?

[メイン2] カンナ・カムイ : 「むぅん」
ステーキをじっと見つめて。

[メイン2] カンナ・カムイ : そこから、また…伊介へと。

[メイン2] カンナ・カムイ : 「伊介は…こわくて強い、あとこわい」

[メイン2] カンナ・カムイ : 「でも……やっぱり、優しくて…好き」

[メイン2] カンナ・カムイ : 『お母さん』が私にいたら、きっとこんな感じなのかな…?

[メイン2] 犬飼伊介 : 「っ……う、うっさいわよぉ!早く食べちゃいなさぁい!」

[メイン2] 犬飼伊介 : 数秒で主張が矛盾する。

[メイン2] カンナ・カムイ : 「……えへへへ、たべるね」

[メイン2] 犬飼伊介 : ……べ、別に、焦ってないしぃ〜〜〜。

[メイン2] カンナ・カムイ : 叱られたというのに、なぜだか嬉しそうな顔で。

[メイン2] カンナ・カムイ : きっと、叱られれることもされていなかったカンナには。
こんな『家族関係』でも、楽しいのだろう。

[メイン2] 犬飼伊介 : 「……フゥ……ふふ」
頬杖をつきながら、楽しそうに食事するカンナを見守りながら。
暗殺者の女は、ひとときの幸せを、感じた。

[メイン2] カンナ・カムイ : 「ふえへへへ~~……」
また、自らの口を汚すようにガツガツとステーキを食べながら。

[メイン2] カンナ・カムイ : カンナは感じる、そこに幸せを。
楽しいと感じる、その気持ち。

[メイン2] カンナ・カムイ : そこに『冷たい温度の人間』はいない。

[メイン2] カンナ・カムイ : 『暖かい温度』しか残っていないから。

[メイン2] カンナ・カムイ : そうして、二人は暖かな食卓を過ごした。

[メイン2] カンナ・カムイ :  

[メイン2] カンナ・カムイ :  

[メイン2] カンナ・カムイ :  

[メイン2]   : 『母親』。

[メイン2]   : それは自らの子どものため、持つ愛情をも隠して厳しく接する必要がある。

[メイン2]   : 時には甘く、時には厳しく。
そうして子どもが”登竜門”となる世の中を渡り、成長していくことを願うのだ。

[メイン2]   : ただしかし、親の気持ち子知らず。

[メイン2]   : 子どもは厳格な面だけ切り取って覚えてしまう。

[メイン2]   : そうして母親はこう揶揄されるのだ。
鬼、竜、妖怪、あるいは────

[メイン2]   : ────『悪魔』、とも。

[メイン2]   :  

[メイン2]   :  

[メイン2]   :  

[メイン2] オビト :  

[メイン2] オビト :  

[メイン2] オビト :  

[メイン2] オビト : 野望が潰え、己の信念もまた打ち砕かれ

[メイン2] オビト : 1人、島にてその月を眺め続ける

[メイン2] オビト : 「……とは言え、罪を償えとはまた簡単に言ってくれる」

[メイン2] オビト : 事実、やれと言われて最初に何をすればいいかわからないのも人情だ

[メイン2] オビト : 今の今まで暗躍しかしなかった分、己の知恵のみではどうにも思いつくものも思いつかず

[メイン2] オビト : 輪廻天生で雑に死人を蘇らせようにも死ぬなと言われている以上それも出来ず

[メイン2] オビト : ……今ここで考え込んでいても埒があかんな

[メイン2] オビト : 右眼に力を込め

[メイン2] オビト : 男は…虚空に─────

[メイン2] オビト :  

[メイン2] オビト :  

[メイン2] オビト : ……

[メイン2] オビト : 降り立つは、神威の空間

[メイン2] オビト : 不可侵領域であったそこには、様々な形跡が残されており

[メイン2] オビト : 目に付いたのは、己とあの女が決戦を繰り広げた木々や焼け跡、血痕が目立つ立方体

[メイン2] オビト : …ククク、ああそうだ

[メイン2] オビト : 確か───停滞は歩んで打破しろだったか?

[メイン2] オビト : いいだろう

[メイン2] オビト : オレは────償うべき事を見つける為に

[メイン2] オビト : 貴様と同じ宿命を背負ってでも見つけ出してやろう

[メイン2] オビト : 再び眼に力を込め、背後にある残骸共を一瞥し

[メイン2] オビト : 『神威』

[メイン2] オビト : 男は1人、黒い空間から消えた

[メイン2] :  

[メイン2] : これは余談だが

[メイン2] : 以降、各地の紛争地帯や貧困地域にて

[メイン2] : 仮面を被った少年とも老人とも判別出来ない何かが

[メイン2] : 武器を向けられれば、幽霊の如くすり抜け驚愕をもたらしつつ

[メイン2] : 対話と施しを繰り広げていたと言う

[メイン2] : その男の名前は

[メイン2] :

[メイン2] :  

[メイン2] nomame :  

[メイン2] :

[メイン2] :  

[メイン2] : 名前なんてものは

[メイン2] : その地域ごとに変わるだろう?

[メイン2] :  

[メイン2] :  

[メイン2] :